媒介契約は、売却を急ぐなら専任媒介、人気エリアの物件で複数社を競わせたいなら一般媒介が基本です。3種類の違いは「何社に頼めるか」「販売状況の報告義務」「レインズ登録義務」の3点に集約されます。そして契約の種類より重要なのは、囲い込みをしない会社を選ぶこと。札幌で30年近く売却の相談を受けてきた経験から言うと、契約書のタイプで損をする人より、会社選びを間違えて損をする人のほうが圧倒的に多いのが実情です。
【この記事のポイント】
- 一般・専任・専属専任の違いは「依頼できる社数」「報告義務」「レインズ登録」の3点で整理できる
- どの契約でも仲介手数料の上限は同じ。「専任だと安くなる」ことは制度上ない
- 契約タイプ選びより先に、囲い込みをしない会社かどうかの見極めが売却額を左右する
今日のおさらい:要点3つ
- 専任媒介は1社に任せる代わりに2週間に1回以上の報告義務とレインズ登録義務があり、初めての売却や築年数が経った物件に向く。
- 一般媒介は複数社に同時依頼でき、駅近や人気エリアなど「放っておいても問い合わせが来る」物件で力を発揮する。
- 囲い込み(自社で買主も見つけるために他社からの紹介を断る行為)は専任系で起きやすい。レインズ登録証明書と取引状況の確認で見抜ける。
この記事の結論
- 一言で言うと、媒介契約は「物件の売れやすさ」と「自分がどこまで手をかけられるか」で選ぶもの
- 最も重要なのは、契約の種類そのものより、販売活動を隠さず報告してくれる会社を選ぶこと
- 失敗しないためには、契約前に複数社の査定と販売戦略を並べて比較し、囲い込みへの姿勢を質問すること
「一般媒介 専任媒介 どっち」と検索し続けている札幌の売主さんへ
査定を頼んだ会社から「専任媒介でお願いします」と言われた夜、スマホで「専任媒介 デメリット」「一般媒介 どっち」と何度も打ち込む。営業担当の説明は流暢だったけれど、どこか自社に都合のいい話に聞こえた。妻に「どっちがいいの?」と聞かれても答えられない。これで大丈夫なのか。言われるまま判子を押していいのか。
なぜこの選択で迷いやすいのか
迷う理由ははっきりしています。不動産会社は専任媒介を勧めたがるからです。1社独占なら広告費をかけても回収できる。両手仲介(売主と買主の両方から手数料を得る取引)のチャンスも増える。つまり会社側の合理性と、売主の利益が常に一致するとは限らない構造がある。
だからこそ、仕組みを知らないまま契約すると「会社にとって得な契約」を選ばされる可能性があります。この記事では、3種類の違いを中立の目線で整理し、あなたの物件がどれに向くかを判断できる基準まで落とし込みます。
3種類の違いを1分で整理する
一般媒介は、複数の会社に同時に依頼できる契約です。報告義務なし、レインズ(全国の不動産会社が物件情報を共有する国土交通大臣指定のネットワーク)への登録も任意。自分で買主を見つけて直接契約することもできます。
専任媒介は1社だけに依頼する契約。2週間に1回以上の販売状況報告と、契約から7日以内のレインズ登録が義務です。自分で見つけた買主と直接契約するのは可能。契約期間の上限は3ヶ月です。
専属専任媒介はさらに縛りが強く、報告は1週間に1回以上、レインズ登録は5日以内。ただし自分で買主を見つけても、必ずその会社を通す必要があります。親族や知人が買ってくれる可能性が少しでもあるなら、専属専任は避けたほうがいい。
札幌で自宅を売る人のための媒介契約の選び方と判断基準
ここからは、どの契約があなたに合うかを具体的に見ていきます。当社に都合のいい話ではなく、他社と比較する場でもそのまま使える基準にしました。
契約タイプを決める5つの判断基準
- 物件の人気度:駅徒歩10分以内・築浅・人気学区なら一般媒介も有力。 複数社が競って動くため、放っておいても問い合わせが入る物件は独占させる必要がありません。
- 売却の緊急度:住み替えや相続で期限があるなら専任媒介。 報告義務とレインズ登録義務があるぶん、販売活動が「見える化」され、戦略の修正も早くなります。
- 自分の手間:複数社との窓口対応や鍵の管理を負担に感じるなら専任系。 一般媒介は連絡・内覧調整がすべて複数倍になります。共働きで時間がない方には正直、重い。
- 自己発見取引の可能性:知人・親族が買う可能性が少しでもあるなら専属専任は外す。 一般か専任なら直接契約が可能です。
- 担当者への信頼度:まだ見極めきれないなら、まず3ヶ月の専任で試す手も。 媒介契約の期間上限は3ヶ月。更新しない自由は売主にあります。
5つすべてで判定する必要はありません。ただ、よくあるのが「大手だから」という理由だけで専属専任を選ぶパターン。縛りが最も強い契約は、会社を見極めたあとで選んでも遅くないのです。
知っておくべき業界リスク「囲い込み」とその見抜き方
囲い込みとは、専任系の契約を受けた会社が、他社から「買いたいお客様がいます」と紹介を受けても「商談中です」と嘘をついて断る行為です。目的は自社で買主も見つけて手数料を両方から取ること。売主にとっては、売れるチャンスを潰され、売却期間が延び、値下げに追い込まれる実害があります。
見抜く方法は3つ。第一に、レインズ登録証明書を必ず受け取り、売主専用の確認画面で取引状況が「公開中」になっているかを自分で確かめる。第二に、契約前に「両手仲介にこだわらず他社の買主も受け入れますか」と正面から質問する。ここで言葉を濁す会社は候補から外していい。第三に、報告書に「他社からの問い合わせ件数」が書かれているかを見る。ゼロが続くのに理由の説明がないなら、疑っていい兆候です。
なお、どの契約でも仲介手数料の上限は同じで、売買価格400万円超なら「価格×3%+6万円+消費税」。専任にしたから手数料が安くなる、という制度はありません。値引きを餌に専任を迫る営業には注意が必要です。
現場の事例:契約の選び直しで動き出した2件
実際にあった相談例をふたつ。ひとつは、札幌市内の築22年の戸建てを大手1社の専属専任で6ヶ月売っていた60代のご夫婦。問い合わせがほぼなく、更新のタイミングで当社に相談に来られました。「正直、どこも同じじゃないかと半信半疑でした」とご主人。レインズの取引状況を一緒に確認すると、長期間「書面による購入申込みあり」のまま。実際には申込みなど入っていませんでした。契約を切り替え、価格を見直して約4ヶ月で成約。「毎週の報告が来るだけで、あの宙ぶらりんの感じがなくなった」とおっしゃっていたのが印象的でした。
もうひとつは、地下鉄駅徒歩5分・築8年のマンションを売った40代の方。物件力が高かったため、あえて一般媒介で2社に依頼する形をご提案しました。「1社に絞らせないんですか」と驚かれましたが、2社が競った結果、売出しから約2ヶ月、ほぼ希望価格で成約。すべての物件に専任が正解ではない、という好例です。※いずれも個別事例で、物件や市況により結果は異なります。
比較した売主さんが最後に確認していたポイント
複数社を回って比較した方が契約前に確認していたのは、査定額の高さではありませんでした。「なぜその価格で売れると考えるのか」の根拠、囲い込みへの姿勢、売れなかった場合の戦略修正のタイミング。この3つです。
ケースによりますが、査定額が飛び抜けて高い会社は、専任を取るための「高預かり」の可能性があります。札幌で2000件以上の相談に関わってきて感じるのは、契約タイプの議論より、この見極めのほうがよほど売却額に効くということ。当社は購入・売却を分断せず出口まで設計する立場なので、「今は売らないほうがいい」とお伝えすることもあります。
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よくある質問
Q1. 一般媒介と専任媒介、結局どっちが早く売れますか?
A1. 物件によります。駅近・築浅など人気物件は一般媒介で複数社が競うと早いことも。築年数が経った物件や郊外は、専任で1社が広告費をかけて動くほうが早い傾向です。
Q2. 専任媒介にすると仲介手数料は安くなりますか?
A2. なりません。上限は契約の種類にかかわらず同じで、400万円超の物件なら「価格×3%+6万円+消費税」です。値引きを条件に専任を迫られたら、その理由を確認してください。
Q3. 専属専任媒介を選ぶメリットはありますか?
A3. レインズ登録が5日以内、報告が週1回以上と最も手厚い点です。ただし自己発見取引ができないため、知人・親族が買う可能性が少しでもあるなら専任媒介までにとどめるのが無難です。
Q4. 媒介契約の期間中に解約はできますか?
A4. 専任系の契約期間は最長3ヶ月で、期間満了時に更新しなければ終了します。期間中の解約も可能ですが、会社に落ち度がない場合は広告費等の実費を請求される可能性があり、まず更新しない選択が現実的です。
Q5. 囲い込みをされているか、売主が自分で確認できますか?
A5. できます。レインズ登録証明書に記載された売主専用の確認画面で、取引状況が「公開中」かをチェックしてください。実態と違う「商談中」表示が続くなら要注意です。
Q6. 一般媒介は何社くらいに頼むのがいいですか?
A6. 2〜3社が目安です。多すぎると各社の力の入れ方が下がり、窓口対応の手間だけ増えます。明示型(他にどの会社へ依頼したか通知する方式)にすると各社の動きが締まります。
Q7. 査定額が一番高い会社と専任契約すべきですか?
A7. おすすめしません。専任を取るために相場より高い査定を出す「高預かり」があり、結局売れずに値下げを重ねるケースが典型的な失敗です。根拠となる成約事例を示せるかで判断してください。
Q8. 札幌で売る場合、契約の選び方に地域性はありますか?
A8. あります。地下鉄沿線の人気エリアは一般媒介でも動きやすい一方、郊外や築古戸建ては専任で腰を据えた販売戦略が必要なことが多いです。エリアの需要を査定時に確認しましょう。
まとめ
要点を整理します。
- 3種類の違いは「依頼できる社数」「報告義務」「レインズ登録義務」「自己発見取引の可否」で整理できる
- 人気物件は一般媒介、期限がある売却や築古物件は専任媒介が基本の使い分け
- 手数料の上限はどの契約でも同じ。契約タイプで得をするのではなく、会社選びで差がつく
- 囲い込みはレインズの取引状況確認と、契約前の質問で見抜ける
媒介契約書に判子を押すのは、査定額と販売戦略を最低2〜3社分並べてからでも遅くありません。もし今、1社の説明だけで決めかねているなら、その迷いは正常なサインです。契約の種類も含めて中立の立場で整理したいときは、売却の出口まで一緒に設計してくれる相手に、無料相談で一度話を聞いてもらってください。
参考文献
- 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」
- 公益財団法人不動産流通推進センター「不動産業統計集」
- 国土交通省「標準媒介契約約款」
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